きれいになりたい友人を追うドキュメンタリー

きれいになるためにダイエットに取り組む友人を日々追っていく

【18day】ラブストーリーは突然に③

本日について

 

■データ
身長 157センチ
目標 51.0キロ

 

■本日の体重
体重 57.0キロ
前日比 +0.4キロ

 

■本日の食事
朝 ごはん、味噌汁、ほっけ
昼 ごはん、味噌汁、プルコギ、小松菜のオイル蒸し
晩 麻婆豆腐

 

たまにプルコギがメニューにあることを見逃さない。

家族のメンバーからの人気が高いのだろう。

「糖質、脂質中心の食事で困ってるよ。」と言っていた。

まるで自分が作っていないかのような言い草だ。

友人はたまにこういう言い方をする。

私はそれを非常に気に入っている。

そしてたぶん困ってはいないのだ。

きっと全然困っていないのだ。

 

がんばれ、あと-6.0キロ。

 

ラブストーリーは突然に

 

レジ裏のもの置き場の掃除をしていた。

予約が入らない日はなかなか暇だったのだ。

 

掃除をしてると、私が入る前の従業員たちの写真が出てきた。

日付はたった2年前なのに、みんな若いなぁと思ってみていた。

店長も参加し、掃除もそっちのけで懐かしい写真を見ていた。

「これあいつの好きだった女。」

 

へー。

・・・。

 

写真に写っていたその女は、私たちと同じ制服を着ている。

ちょっと常盤貴子に似てるなぁと思った。

そして少し大人っぽかった。

 

店長曰く、この女には彼氏がいて、その彼氏には妻と子供がいるらしい。

その男と付き合っていることを知っていながらも好きだったらしい。

 

ふーん。

・・・。

 

「”そんな男とは別れろよ”って何度も言ったみたいだよ。」

「そんなこと言われちゃってこの子もまんざらじゃなかったと思うけど、

彼氏とはその後も続いてたみたいだな。」

 

なんだそれ。

ばかじゃないの。

 

「ばか」の矛先は、彼になのか、女になのか、妻子ある男になのか、

はたまた店長になのか、自分の気持ちはわからなかった。

 

穏やかじゃない。

穏やかじゃない気持ちを隠しながら家に帰った。

次の日はお休みだった。

 

きっとその彼女のことを大好きだったんだろうな、と思った。

私なんかよりずっと好きなんだろうな、と思った。

それを考えると血の気が引いていく気がした。

大好きなバラエティ番組が全然入ってこなかった。

 

今何をして、何を考えているんだろう。

今私のことを考えているだろうか、

心の中に私はいるだろうか、

いるとしたら心の中のどれくらいを占めているだろうか、

心の中にはあの女もいるのだろうか、と、

帰宅してから彼のことだけを考えていた。

 

当時は携帯なんかなかった時代だ。

メールもLINEもないので、

送れるといったらテレパシーくらいだった。

 

そうだ、家に電話をしてみよう。

そう思った。

でも待って。

電話をしたら、私の気持ちは「グレー」から「クロ」になる。

好きであることは彼にばれてしまう。

それでもいいのか。

ばれるということは恋人になるということだ。

恋人になるということは「ちょうちん」がセットでついてくる。

彼の「ちょうちん」は受け入れられるか。

 

そんなことを考えながら、

指は電話番号を押し始めていた。

だけど、最後の「9」が押せない。

何度もチャレンジしたが、最後の「9」が押せないのだ。

 

よし止めよう。

電話をかけるのはやめだ。

家に行こう。

そう思って、次の瞬間には家を出ていた。

最寄りの駅まで走っていた。

電車に乗り込むまで、ドアtoドアで12分かかる。

なかなかの中距離走だ。

それでも止まることなく走った。

別に急がなくてもいいのに。

 

改札を通るとき、電車がもう到着していた。

扉が閉まるまで間に合うか。

階段を上って、電車に乗った。

そしてぷしゅーとドアが閉まった。

良かった、休日ダイヤだから次の電車は7分後だ。

走って正解だ。

 

息を整えて考える。

まず、今家にいるかはわからない。

彼の最寄り駅から家に行く途中に、車を停めている駐車場があった。

まずはその駐車場に寄ろう。

そこに車がなかったら今日は帰ろう。

そこに車があったら家に行ってみよう。

 

よく考えればすごく大胆なことをしている。

大胆かつ恥ずかしい。

告白なんて生まれてこの方したことない。

これは告白だよな・・・。

できれば帰りたい・・・。

車がなければいいのに・・・。

そんなことを思いながら最寄り駅に到着した。

 

雪が降っていた気がする。

駐車場に行った時点で車があってもなくても嫌なら引き返せばいいか。

そんなに気負うことはないか、と足を進めた。

 

もう少しで駐車場だ。

黒いスポーツカーだった。

この車も全然好きじゃない。

もう少しで車が見えそうだ。

 

その時、むかえから彼が現れたのである。

びっくりしていた。

そりゃそうだ。

彼にしたら予期してない出来事すぎる。

 

言葉が出てこなかった。

何も準備をしていない。

 

やっと出てきた言葉がこれだ。

「なに、そのバンダナ。」

 

彼はペイズリー柄でオレンジの、

どオレンジのバンダナを頭に巻いていた。

おしゃれじゃない方の、

おしゃれじゃない人間のバンダナの使い方だ。

それで雪から頭を守ろうとでも思ったか。

 

彼のそのセンスが救ってくれたのだ。

このうら若き乙女心を救ってくれた。

 

「とって、そのバンダナ。」

あっけなくバンダナは御役御免となったのだ。

 

そうだ。

好きじゃない洋服も、

好きじゃないインテリアも

そしてちょうちんのことも、

この人とは話し合って解決すればいい。

そう思った。

 

こうして彼と私は恋人になった。

あの時電車に乗ってなかったら、

あの時駅まで走ってなかったら、

あの時写真を見つけてなかったら、

あの時応募する店を間違ってなかったら。

 

人生にはひとつもむだなものはないのかもしれない。

そう思った冬の夜だった。